1週間で、と言われて
1週間でと最初は思っていたが
2日も経つと
「キミ、あれ、出来たか?」と
松下幸之助さんが言う。

●「京に住む人が、急に東山に行く用事が出てきて、出かける。しかし、そこに行き着く頃、いや、これは、西山のほうに行ったほうがいいと思うならば、すぐにとって返し西山に向かうべきだ。せっかくここまできたんだから、とりあえず、ここで為(や)り、西山へは帰って出直そう、と思うと、実は一生、西山へは行かないことになる。

● 西山に行くべきだと思ったら、東山までたどり着いていても、踵(きびす)を返して、西山に行きなさい。(それが出来る男の行動なんだ)」というようなことが、吉田兼好の『徒然草』にあったように記憶している。

● また、続いて、「大勢で集まっているとき、ふと、誰かが、ますほの薄(すすき)か、まそほの薄か」と言い出した。すると、それは摂津の上人が知っているはずだ、と別の誰かが言う。登連という法師が、折しも雨の降っているなか、その上人に訊きに行くという。周囲が、なにも雨の中、わざわざ、ととめると、法師は、人の命が雨のあがるまで待つものとお思いか。我が死に、あるいは、上人が亡くなられたら、尋ね聞くことができましょうや、と行って出かけた」。

● 結局は、まそほの薄が、正しかったようだが、吉田兼好は、法師の、そのような行動を、「ゆゆしく、ありがたう覚ゆれ」、素晴らしくも、ありがたいことだ、と評価している。

● 松下幸之助さんから、当然、しょっちゅう、指示が出されたが、私は、その指示されたことを仕上げるのに、1ヶ月で、と言われれば、2週間内(うち)に、1週間で、と言われれば、3日間内で、3日で、と言われれば、その晩、徹夜してでも仕上げ、報告した。

● もちろん、最初から、そうしていたわけではない。1週間で、と言われて、1週間で、と最初は、そう思っていたが、2日も経つと、「キミ、あれ、出来たか?」と聞く。うん?と思いながら、「すみません。いま、取り組んでいます。5日後にご報告します」というと、「そうか」と別に怒りもせず、頷く。

● しかし、数回、そのようなことが続くと、なるほど、待ってるんだな、と分かるようになる。分かるようになれば、松下さんからの指示は、言われたら、すぐに、仕上げる、指示された時間に捉われず、可及的速やかに仕上げ、報告することがクセになった。

● 仕事が多い、多過ぎると嘆息する人がいるが、私は、20も30も一度に仕事を持っても、多過ぎるとも、多忙だとも思ったことがない。ないのは、松下幸之助さんのおかげで、仕事をすぐ処理し、「仕事の荷物」を素早く下ろし手放し、いつも身軽になっておくことを覚えたからだ。

● ただ、心がけているのは、①仕事の順番を決めること、②それぞれの仕上げの時間を決めること、③充実した仕上げにすることである。(順番J-unban・時間J -ikan・充実J-uhjitsu=3J)

● 仕事の順番は、刻々と変わる。なぜなら、仕事は、常に新しく「追加」されるからだ。だから、都度、最重要は、なにか、あるいは、最重要の合間に出来る仕事は、なにか、並行して出来るものは、ないか。だから、必ずしも、最重要が先頭でもない。時間も臨機応変。ただ、仕上げだけは、最重要とか合間仕事を問わず、充実して、良きものと心掛けてきたし、今も心掛けている。

● 吉田兼好ではないが、「すぐ取り組み、すぐ処理すること」、そして、なにより、「仕事という荷物を早く下ろして身軽になること」が、一番楽な仕事の仕方であり、コツのように思う。

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